科目名: 統計力学特論(2単位) サブタイトル: 量子散逸系と量子通信 講師名: 有光敏彦(筑波大学大学院数理物質科学研究科 教授) 番 雅司(日立製作所基礎研究所 主任研究員) 日程: <前半>非平衡・量子散逸系の正準理論 9月22日(水),24日(金) 有光敏彦 <後半> 量子通信チャンネルを用いた古典情報伝送 9月27日(月),29日(水)番 雅司 開始時間: 午前 10時40分 午後 13時20 場所: お茶の水女子大学理学部1号館2階 物理第2講義室--講義場所に変更の可能性あり(別途通知予定) 講義概要: <前半> 非平衡・量子散逸系の正準理論 解析力学や量子力学で習ったように,系の時間発展は正準変換である。つまり, 量子力学の言葉を借りれば,同時刻交換関係が保存する。さて,散逸(摩擦な ど)がある場合にも,系の時間発展を正準変換として扱える体系が,はたして創 れるだろうか?密度演算子に対するLiouville方程式(この方程式は,散逸のあ る系をも〔たとえ,それが量子系であっても〕矛盾なく扱える)と,その表現空 間(Liouville空間などと呼ばれている)を,うまく定式化することにより,実 はそれが可能なのである。その体系は,散逸を記述するために統計力学で開発さ れた基本的な自然認識の方法(Boltzmann方程式,Fokker-Planck方程式,確率 Liouville方程式,Langevin方程式で代表される見方)を,ひとつの土俵で統一 的に扱えるものなのである。さらに,散逸現象(エントロピーの増大)は「ある 粒子対」が真空へ凝縮する過程として捉えられることも発見された。 量子系でしかも本質的に散逸(さらに,非平衡状態)を扱わなければならない現 象は,凝縮系物性ばかりでなく,量子情報理論,宇宙論や原子核の問題など,数 多く存在する。それらを扱うための一つの可能性を,その体系の美しさと共に紹 介する。 1. 古典確率微分方程式の体系 2. 量子散逸系の時間発展演算子 3. Non-Equilibrium Thermo Field Dynamics (NETFD)の基礎 4. 真空の不安定性と散逸現象 5. NETFDにおける量子確率微分方程式の体系 6. NETFDにおける量子確率微分方程式の応用 <後半> 量子通信チャンネルを用いた古典情報伝送 量子通信チャンネルを用いた古典情報伝送は最も重要な量子情報処理の一つであ る。この講義では量子通信チャンネルを用いた古典情報伝送を扱う理論を紹介す る。Shannonによる古典通信理論の復習を行った後,量子通信チャンネルと量子 信号検出理論の基礎を説明する。これらの結果を踏まえて,量子通信チャンネル Shannon相互情報量,Holevo通信容量,von Neumann相互情報量を用いて,量子通 信チャンネルを用いた古典情報伝送の定量化を行う。得られた結果を,量子ガウ スチャンネルを用いた情報伝送や量子状態のエンタングルメントを利用した情報 伝送の解析に応用する。 1. Shannon理論 −通信路符号化定理− 2. 量子通信チャンネルと量子信号検出理論 3. 量子通信チャンネルを用いた古典情報伝送 4. 量子ガウスチャンネルの通信路容量 5. 量子デンスコーディング 6. エンタングルメント支援通信路容量
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[ 集中講義トップページ ] 掲載者:奥村剛(okumura @ phys.ocha.ac.jp) 最終更新日: 2004/07/15
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